−−大矢さんはそもそも二玄社の編集部員でしたね。
会社を辞めてイタリアに行っちゃったのは、当時の職場環境や上司に何らかの不満があったから?
大矢 ワハハ、そうじゃありません。そもそも10年前イタリアに住んでみたいと思ったのは、ヨーロッパ取材がきっかけでした。そうした意味で二玄社に感謝しなくちゃあいけません。
そのときオーストリアから陸路でイタリアに入ったんですけど、イタリアに入った途端、太陽の光が格段に明るくなって、花が咲き乱れて、食べものがうまくなって……。
−−シビれちゃったわけですね。
大矢 そのうえ、もともとイタリアのモダーンな工業デザインやクルマに惹かれていたから、つい勢いに乗って辞表を出しちゃって、住み始めたわけです。
−−ところが暮らしてみると……。
大矢 見つけた家は、築600年の煉瓦造り。毎朝八百屋さんの3輪トラックのけたたましいエンジン音に起こされる生活が始まった。そうかと思うと、突然の退去勧告が舞い込んで……。
−−モダーンとかドルチェ・ヴィータ(甘い生活)なんていう言葉とは程遠かった。
大矢 でも次第に、そうしたなかにこそ、ボクが伝えるべき本当のイタリアやイタリア人の姿が隠されているんじゃないか?と思えてきたんです。
本書で採り上げたエピソードのなかには、日本の生活と比べたら「捨て身の戦い」ともいえるような、想像を絶するものもあります。だからイタリアに対して、いまだ「アモカンマン」な人には……。
−−な、なんですか、それ?
大矢 おっと失礼。「アモーレ、カンターレ、マンジャーレ(愛して、歌って、食べる)」です。そうした淡い夢を抱いている読者の方には、ちょいとキツいかもしれません(笑)。

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